生きてるだけでありがたみ

推しくんがずっと好きな仕事をしていられますように

ショウ・マスト・ゴー・オン

私の「推し」は舞台俳優です。

 

 

私が彼を「推し」とした時にはもう彼は界隈では売れっ子の一人で、俳優としてはある程度の地位を確立していた。だから私は彼の駆け出しの頃や、売れなくて苦労してやめようとまで思いつめた日々のことを、彼自身が語ってくれる…まあ悪く言えば本人の思い出補正フィルターを通した話でしか知らない。知識としては知っていても、その時間を一緒に過ごしたわけではない。

推しに限った話ではないけど、それぞれの俳優には「俳優じゃなかった頃」があるし、今現在のその人を形成してきた歴史がある。私自身は「好きになったその時その瞬間が運命でタイミング」派なので、それをリアルタイムで知らないことについて別に悔しいとか思うわけではない。

けど、推しをきっかけに『A3!』というアプリに手を出してみて、誰かのその歴史を擬似的に体験させてもらったことに、今はとても感謝している。

 

正直、最初は手放しでは喜べなかった。

春夏の公演がすごくよかったこと、楽しい舞台であることは、流し見だけどWOWOWの放送を見たから知ってる。作品そのものに悪いイメージがあるわけでは全くない。

でももともと人気の公演に、さらに激戦が予想されるキャスト。しかもこれが1週間程度の公演ならともかく、稽古も含めて丸3ヶ月推しが拘束される。推しが3ヶ月同じ舞台に拘束されるということは、仮にチケットが取れなければ3ヶ月間推しを見れないということだ。まだ主演やそれに匹敵する役ならともかく、そうでもない2.5のチケットのことで、なんで今更こんなに胃を痛めないといけないのか。推しの新しい舞台、新しい役の情報解禁で純粋に喜べなかった自分自身もしんどくて、かなり病んだ。

色んなことを考えたけど、結局私には降りるという選択肢はもちろん、干すという選択肢すらない。何より推しが良かれと思って選んだ仕事。死に物狂いでチケットをかき集めるしかなかった。

そして、二次元のオタクとして今まで色んなものを見て来ている私は、2.5次元作品を見に行く以上は原作のファンへの敬意は絶対に忘れてはならないと思っているので、とりあえずアプリをダウンロードしてやり始めた。

 

そんな流れで、まあ舞台の予習しておくか〜程度で始めたアプリに、ここ数ヶ月私は地味にのめり込んでいました。と言ってもほんとにガチでやってる人からしたらヌルヌル監督なのだけど、そこそこ課金もしてるし、何よりもイベント走ってることにリア友に普通にビックリされたりもした。そう、ガチャ回すの大好きマン、イベントで石を割らせる系アプリにはめちゃくちゃ否定的だったので、やってても基本イベントは絶対走らなかったんですよね…。

思えば、テニミュ1stからこの世界を知って、クソ茶の間だった時期もありつつおおむね10年越しで歴代3人の俳優を推してきた私に、この作品が響かないはずがなかった。

読まずに溜め込んでたストーリーを深夜に一気読みしてべしょべしょに泣いた。ステ春夏もあらためて配信で見直して、以前なんとなく見た舞台の彼らがいかに本物であったかを実感して、みんなのことがもっと大好きになったし、進む秋冬稽古の様子に福利厚生のしっかりした公式のツイートもあいまってどんどん初日が楽しみになっていった。

 

やがて、ずいぶん先のことだと思っていた初日をとうとう迎えてしまった。

 

まだ始まったばかりなのでネタバレを避けて感想は控えておくけど、この作品を、誰の感想も耳にしない状態での初日に観れて本当に良かったと思う。

もう、まだ初日の一幕が終わった時点でハンカチはぐっしょり濡れていて、まだ推しがOP以外でマトモに出て来てもいないのにビロード町から帰りたくないって心底思った。ずっと見ていたい、あと私の手持ちは何枚だったろう、ってもう考えて悲しくなった。こんな気持ちは推しにハマるきっかけになった舞台以来のことで、すっかり一人の舞台俳優のオタクに出戻った今でも、自分はひとつの作品に対してこういう感情をまだ持てたのだ、ということに純粋に驚いた。

 

ここに、ビロード町に私を連れて来てくれたのは推しくんなんだなあ。当たり前のことに、すごく感謝の気持ちでいっぱいになっている。

このトシになって、推しくんには本当に色んなところに連れていってもらってるな、と思う。物理的にも(笑)、概念的にも。

色々言ってごめんね、今回も本当にありがとうね。

 

 

※この段落は若干ネタバレかもしれない

そういえば楽の特殊演出、円盤の収録内容と公演時間の長さから今回はないのでは?って言われてるけど(実際どうなるかは東京楽までわからないけども…)、公演を見たらこれは少なくとも春夏と同じことは出来ないな?とは思いました。

よくよく考えてみればACT1の大オチがそもそも冬組の千穐楽と直接関わってくるから、ストーリー上千穐楽をやらないわけにはいかない(というかやらなかったら未完になってしまう)んですよねえ。

原作をプレイしてみて改めて考えると、春夏は「初日を無事迎えること」に重きを置いた物語だった。だからあの演出が(賛否はさておき)成り立ったところがあると思うんだけど、秋冬はそれに対してそもそも「初日を迎えた舞台が無事千穐楽の幕を下ろすこと」に重きをおいたストーリーなんですよね。楽特殊演出自体はやるかわからないけど、春夏みたいな感じには出来ないだろうなと思います。

 

ところで春夏の映像を初めて見た時も思ったんだけど、初見時は原作を知らなかったので「ほ〜こういう話か」くらいの感覚だったけど、改めて見るとこれほど「生の役者が演じることに意味のある作品」ってなかなかないんじゃないかなと思う。あと私が今まで見て来た2.5の中で、もっともテニミュに近い文法だったのでとても入り込みやすかったのもある。ガチのミュージカル寄りでもなく、かといってアイドル系でもなく、音楽劇という表現が一番近いかな。コミカルとシリアスのバランスもわりとテニミュっぽかった。

 

それはそうと左京さんの倹約ソングがずーーーっと頭の中をヘビロテしているので助けてほしい!